表紙も金ピカのまさに「伊達」な一冊 |
タイトルは『伊達政宗 Sendai, Miyagi in easy English Date Masamune』という。本というよりは冊子、といった厚さなので、買ったことをすっかり忘れて他の本の間に埋もれていた。
どういった内容かというとコレ、伊達政宗について英語で紹介したおそらく日本で(あるいは世界でも)唯一の単品書籍であろうと思われる。
40ページくらいの冊子で、見開きの半分は写真や図説になっているので、実質的な長さとしてはセンター試験の長文問題くらいだろうか。タイトルにeasy English とあるとおり難易度もそれほど高くなく、関係詞に気を付けながらところどころ辞書をひけば高校1・2年生でも読めると思う。あるいは大学入試にむけた勉強中の学生なら、これくらいは読めないと焦ったほうがいいレベル(笑)である。
発行は仙台国際日本語学校で、もともとそちらの教材として使われているものらしい。奥付をみてみると、
Author(著者) Kazuhiko, Endoとなっている。おそらく学校の先生たちだろう。
Translator(訳) Satomi, Sugai
この本を書店でみかけたのは今年(2015年)の2月、仙台駅前、アエルの丸善だった。洋書部門のランキングトップとして目立つ場所に置かれていたので、みかけた方も多いのではないだろうか。ISBNの発給されたれっきとした書籍だが、仙台国際日本語学校さんのブログによると、仙台丸善と松島の伊達政宗歴史館でしか手に入らなさそうだ(残念ながらAmazonで検索してもでてこなかった)。
副題にSendai, Miyagi とあるように、どちらかといえば米沢時代の「武将」政宗よりも、仙台に移ってからの「統治者」政宗に焦点があてられており、仙台開府、北上川の改修、遣欧使節団の派遣など、政宗の生涯後半についての記述が多い。
奥州仙台おもてなし集団 伊達武将隊 仙台城で会える小十郎はサムライの格好だ! |
英語話者の友達に仙台を案内するとき、ダースベイダーの外見のモデルについて外国人にうんちくをたれたいとき(そんな場面あるのか?)には必携の一冊であろう。
別に外国人の友達がいなくても、伊達政宗が好きだったり、英語を勉強中の方なら十分に楽しめる内容だ。しかも値段も500円とリ-ズナブル! 仙台に住んでいるならさっそく買いに行くべきだし、旅行で仙台に行くなら下手なガイド本を買うよりもこっちにしたほうがいい。
...と、非常にすばらしい本なのだが、このブログの性質上、あえて重箱の隅をつつくようなツッコミを入れさせていただくと(失敬!!)...
政宗の師である虎哉宗乙とともに片倉小十郎が"tutor" (家庭教師、指導教員)と紹介され、その後、共に戦ったような記述が見受けられないので、あくまでも政宗配下の武将であり側近であった彼の一面が欠け落ちているように思えた。
これを読んだ後に仙台城で伊達武将隊の姿を見たら、「先生」だと思っていた片倉小十郎がサムライの格好をしているのをみて違和感を覚えてしまうかもしれない。2人の"tutor"のうち虎哉和尚についてははっきりと"monk"(僧)と書いてあるのでなおさらである。
まぁ小姓やら近習やらといった概念の説明も大変で紙幅の関係もあるだろうし、"tutor"でもけっして誤りではないので、ホント揚げ足とりの様で申し訳ない...。
本の最後には、政宗の辞世の句である
曇りなき 心の月を 先立てて 浮世の闇を 照らしてぞ行くが英訳されている。
I am moving forward in the changing era with a peaceful mind that shines like a clear moon
有名な政宗の肖像画。左上が例の漢詩。
...ってか「伊達政宗」で検索してこの画像
みつけるのにすごく苦労した。「政宗」で
てくるのって、一体どうなんだっ!?
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おそらく詩なり句の翻訳って、そもそも解釈がわかれてくるのでまずは現代語にどう訳すか、それをさらにどう英訳するか、という2つのステップを踏まなくてはならず、一番難しい分野だと思う。だからこそ他の人の翻訳は勉強になるし、とてもおもしろい。
ただ、個人的には辞世の句よりも「酔余口号」と題する漢詩のほうが有名で、かつ面白いし政宗らしさをうまく表現していると思っているので、そちらを英訳してほしかった。「馬上少年過ぐ...」という例のアレである。
...と、文句をつけてばっかりなようで仙台国際日本語学校の方に悪い気がしてきたので、いっそのこと自分で英訳してみることにした。
馬上少年過 馬上少年過ぐ
世平白髪多 世は平らかにして白髪多し
残躯天所赦 残躯天の赦す所なれば
不楽是如何 楽しまずして是れ如何せん
The days I devoted all my time to fighting on the back of a horse was a long time agoうーん、文法的にはあってるハズだが、どこまでニュアンスが通じているかは自信がない(笑)それにしても、これだけの内容をわずか5×4文字で表現できてしまう漢詩のすごさに改めて驚く。この英文の、漢詩に対する自分の解釈も含めた逆訳としては
Now the world sets peaceful and my hairs went gray
Luckily or somehow I survived the age of lingering wars
God would permit me to spend my remaining life with a great joy
馬上で戦にあけくれた日々は遠い昔となりといったところ。
世は平和となって私は老い白髪が増えてしまった
幸運にも戦乱の世を生き延びることができたのだから
天も余生を楽しむことを許してくれることだろう
一番の違和感は「天の赦す所」の「天」を"God"にしちゃってるところなんだが、"The God of the Sun" ってしちゃうのも説明的な気がするし、むしろ天照大御神をさしちゃう気もするし...。
仙台国際日本語学校さん、添削してくださいっ!!
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